退職後に体調を崩したら?傷病手当金が対象外になる理由と使える制度

退職後に発症した病気やケガは、傷病手当金の対象になりません。在職中から受給しているか、受給できる状態にあることが要件だからです。
ただし、失業手当の受給期間の延長や保険料の減免など、使える制度は残っています。
- なぜ退職後の発症は対象外なのか
- それでも使える3つの制度
- 在職中の方が、いま確認しておくべきこと
退職してから体調を崩し、「傷病手当金は使えないのだろうか」と調べてこのページにたどり着いた方もいるかもしれません。
結論から言えば、退職後に発症した傷病について、新たに傷病手当金を申請することはできません。この記事では、その理由と、代わりに使える制度を整理します。
なぜ対象外なのか
傷病手当金は、健康保険の被保険者に対する給付です。退職すると被保険者ではなくなるため、原則として受給資格を失います。
例外として認められているのが「資格喪失後の継続給付」ですが、これは在職中にすでに始まっていた支給を、退職後も続けるという制度です。新たに始めるためのものではありません。
| 要件 | |
|---|---|
| 1 | 退職日までに、健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること |
| 2 | 退職日の時点で、傷病手当金を受けているか、受けられる状態にあること |
| 3 | 退職日の時点でも、引き続き労務不能の状態であること |
| 4 | 退職後も、同じ傷病で労務不能の状態が続いていること |
要件2により、退職後に発症した傷病は対象になりません。
詳しくは傷病手当金は退職後も受け取れる?で解説しています。
対象になるかどうかの分かれ目
いくつかのケースで整理します。
| 状況 | 継続給付 |
|---|---|
| 在職中に受給していて、退職後も同じ傷病で療養が続く | 対象になります |
| 在職中に受診し、待期を満たしていたが、有給で給与が出ていた | 対象になる場合があります |
| 在職中に症状はあったが、受診していなかった | 対象外です |
| 退職後に初めて受診した | 対象外です |
| 退職後に別の病気を発症した | 対象外です |
「受けられる状態」とは
要件2の「受けられる状態」というのは、支給の要件を満たしているものの、給与が支払われているために支給が止まっているといった場合を指します。
たとえば、待期3日間を満たして労務不能の状態が続いているが、有給休暇を使っているために給与が出ている、というケースです。この場合、退職後に継続給付を受けられる可能性があります。
在職中に症状があっても、受診していなければ、あとから証明する方法がありません。
医師が証明できるのは、実際に診察したうえで判断した内容だけです。診察していない期間について、さかのぼって証明することはできません。
退職後でも使える3つの制度
傷病手当金が使えなくても、他に使える制度があります。
1|失業手当の受給期間の延長
失業手当を受け取れる期間は、離職日の翌日から原則1年です。療養で働けない場合、この間に求職活動ができません。
病気やケガで30日以上働けない状態が続いた場合、受給期間を最長4年まで延長できます。
受給期間の延長は、退職後に働けなくなった場合でも申請できます。
回復してから失業手当を受け取れるよう、権利を保存しておく手続きです。申請しないと、1年で権利が消えます。
詳しくは失業手当の受給期間は1年をご覧ください。
2|国民健康保険料・国民年金保険料の減免
収入がない状態で保険料を納めるのが難しい場合、市区町村や年金事務所に相談できます。
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 国民健康保険料の軽減 | 会社都合や特定理由離職者に該当する場合、前年の給与所得を30%とみなして計算されます |
| 国民年金保険料の免除・猶予 | 失業を理由とする特例があります。所得が少ない場合も対象です |
| 住民税の徴収猶予・減免 | 事情によっては、納付を待ってもらえる場合があります |
いずれも申請が必要です。自動では適用されません。詳しくは退職後の健康保険はどうする?をご覧ください。
3|医療費の負担を軽くする制度
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 高額療養費 | 1か月の医療費が上限額を超えた場合、超えた分が払い戻されます |
| 自立支援医療(精神通院医療) | 精神疾患で通院する場合、医療費の自己負担が原則1割になります |
| 限度額適用認定証 | 事前に申請すると、窓口での支払いが上限額までになります |
自立支援医療は、お住まいの市区町村の担当窓口で申請します。通院が続く場合、負担の差は大きくなります。
在職中の方へ
この記事を、まだ在職中の状態でお読みの方へ。
| できること | 退職後は |
|---|---|
| 健康保険の被保険者期間を1年にする | できません |
| 傷病手当金の受給を開始する | できません |
| 受診して、労務不能かどうかの判断を受ける | できますが、在職中の状態は証明できません |
| 残業や勤怠の記録を手元に残す | 難しくなります |
体調に不安がある場合、在職中に医療機関を受診しておくかどうかで、その後の選択肢が変わります。
これは、給付を受けるために受診をおすすめするものではありません。
実際に体調の変化があり、仕事を続けることに不安を感じている場合に、その事実を記録として残しておくという意味です。労務不能かどうかを判断するのは医師であり、ご自身でも事業者でもありません。
退職前の準備については退職前にやっておくことにまとめています。
月収と退職予定日を入れるだけ。
在職中か退職後かによって、受け取れる制度が変わります。
※ 試算です。実際の支給は各窓口の審査により決まります
よくある質問
任意継続被保険者は、原則として傷病手当金の対象になりません。ただし在職中から継続給付の要件を満たしていた場合は、任意継続かどうかに関わらず継続給付を受け取れます。任意継続に入ったから新たに受給できるようになる、ということはありません。
国民健康保険には、原則として傷病手当金の制度がありません。自治体が独自に定めている場合もありますので、お住まいの市区町村にご確認ください。
継続給付の要件を満たしていれば、同一の傷病として扱われる可能性があります。ただし退職日の時点で受給しているか受けられる状態にあることが前提です。判断は保険者が行いますので、加入していた保険者にご確認ください。
傷病手当金は対象外ですが、失業手当の受給期間の延長は申請できます。医療費については高額療養費や限度額適用認定証が使えます。また障害が残った場合は、障害年金の対象になることがあります。
病気やケガで日常生活や仕事に支障が出た場合に支給される年金です。初診日に加入していた年金制度によって、障害基礎年金または障害厚生年金の対象になります。要件が複雑なため、年金事務所または社会保険労務士にご相談ください。
まとめ
- 退職後に発症した傷病は、傷病手当金の対象になりません
- 継続給付は、在職中に始まっていた支給を続ける制度です
- ただし失業手当の受給期間の延長は、退職後の発症でも申請できます
- 保険料の減免や医療費の軽減も、申請すれば使えます
- 在職中の方は、被保険者期間と受診の記録が退職後の選択肢を決めます
すでに退職されている場合、傷病手当金については選択肢が限られます。ただ、使える制度がまったくないわけではありません。
ご自身の状況で何が使えるか分からない場合は、一度ご相談ください。確認だけでも承ります。
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)|傷病手当金、資格喪失後の継続給付、高額療養費
- ハローワークインターネットサービス|受給期間の延長
- 厚生労働省|自立支援医療、健康保険制度の概要
本記事は制度の一般的な説明です。実際の支給の可否・金額・期間は、加入先の健康保険の保険者およびハローワークの審査により決定されます。当社が受給を保証するものではありません。
当サービスは民間の相談サポートであり、公的機関ではありません。症状のない方に受診をおすすめするものではありません。
本記事に記載の内容は、令和7年8月1日時点のものです。制度改正により変更される場合があります。
※本記事は制度の一般的な説明です。個別の可否・金額は、健康保険の保険者およびハローワークの審査により決定されます。記事内容は公開時点の情報にもとづきます。