傷病手当金は退職後も受け取れる?継続給付4つの要件と在職中にすべき確認

傷病手当金は、4つの要件をすべて満たしていれば退職後も受け取り続けられます。これを「資格喪失後の継続給付」といいます。
ただし、4つのうち2つは在職中にしか満たせません。退職してから知っても間に合わないため、退職日が決まる前の確認が重要になります。
- 退職後も傷病手当金を受け取るための4つの要件
- 在職中にしか満たせない要件と、その確認方法
- 失業手当との関係と、受給期間を延長する制度
退職を考えているとき、「いま受け取っている傷病手当金は、辞めたあとも続くのだろうか」と気になる方は多いと思います。あるいは、体調を崩して休職中で、このまま退職したらどうなるのかと不安を感じている方もいるでしょう。
結論は冒頭のとおりですが、問題は「どの要件が、いつの時点で決まるのか」という点です。制度そのものは公開されていますが、順番と期限を知らないまま退職日を迎えてしまい、受け取れるはずだったものを取りこぼす方が少なくありません。
この記事では、継続給付の要件を図解で整理し、時系列のどこで何が決まるのかを説明します。
傷病手当金とは|金額・期間・条件
傷病手当金は、病気やケガで働けなくなったときに、加入している健康保険から支給される給付です。会社を休んでいるあいだの生活を支えるための制度で、健康保険料を納めている方であれば、雇用形態を問わず対象になります。
いくら受け取れるか
支給額は、支給開始日以前の12か月間の標準報酬月額を平均した額をもとに計算します。
1か月あたり約20万円(30日分の場合)
月収がおおよそ30万円の方であれば、1か月あたり約20万円が目安になります。給与の全額ではありませんが、療養に専念しながら生活を維持するには大きな支えになります。
ご自身の場合にいくらになるかは、受給シミュレーターで確認できます。月収と退職予定日を入れるだけで、受給スケジュールと毎月の入金目安まで表示されます。
どのくらいの期間、受け取れるか
支給を開始した日から通算して1年6か月です。
ここは制度改正があった部分です。令和4年1月から通算制になり、途中で復職した期間があっても、その分は日数に含まれなくなりました。以前は「支給開始日から1年6か月」という期間の数え方だったため、復職して再度休職すると残りの期間が減ってしまう仕組みでしたが、現在は改善されています。
受け取るための条件
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 業務外の傷病 | 仕事が原因の場合は労災保険の対象となり、傷病手当金は支給されません |
| 労務不能 | 療養のため仕事に就くことができない状態。判断するのは医師です |
| 待期3日間 | 連続する3日間を含み、4日以上仕事を休んでいること |
| 給与の不支給 | 休んだ期間について給与の支払いがないこと(一部支給の場合は差額) |
制度の詳しい要件は、加入先の保険者が公表しています。協会けんぽに加入している方は全国健康保険協会(協会けんぽ)のサイトで確認できます。健康保険組合に加入している場合は、その組合の案内をご覧ください。
申請書には医師が記入する証明欄があります。ここに記入がなければ申請できません。ご自身で「働けない」と判断するものではなく、実際に受診し、医師の診察を受けたうえでの判断になります。
症状に心当たりがある場合は、まず医療機関を受診してください。受診しないまま時間が過ぎると、あとから「あのとき働けない状態だった」と証明することができなくなります。
退職後も受け取り続けるための4つの要件
在職中に受けていた傷病手当金を、退職後も継続して受け取るには、次の4つをすべて満たす必要があります。1つでも欠けると継続給付は受けられません。
※ 在職中のみ の印がついた2つは、退職後には満たしようがありません。
要件1|被保険者期間が継続して1年以上
健康保険の被保険者だった期間が、退職日までに継続して1年以上必要です。
ポイントは「継続して」という部分です。転職などで健康保険を一度抜けた期間があると、そこでリセットされ、新しい健康保険での期間を1から数えることになります。転職から1年経っていない方は、この要件を満たせません。
ただし、これは継続給付についての要件です。在職中であれば、被保険者期間が1年未満でも通常の傷病手当金は受けられます。
要件2|退職日の時点で受給しているか、受けられる状態にある
退職してから発症した病気やケガは対象になりません。
「受けられる状態」というのは、たとえば待期3日間を満たしていて労務不能の状態が続いているものの、有給休暇などで給与が支払われているために支給が止まっている、といった場合を指します。この状態であれば、退職後に継続給付を受けられる可能性があります。
要件3|退職日の時点でも労務不能
退職日に労務した場合は、労務可能な状態になったものとして扱われます。この場合、退職後の継続給付は受けられません。
有給休暇を消化して退職日を迎える場合も、労務不能の状態が続いていることが要件になります。判断に迷う場合は、事前に加入先の健康保険の保険者や専門家にご確認ください。
要件4|退職後も同じ傷病で労務不能
継続給付は、在職中と同じ傷病についてのものです。退職後に別の病気になっても、それは対象になりません。
ここが在職中との最大の違いです。
在職中であれば、いったん復職して再び体調を崩しても、通算1年6か月の枠内で支給を再開できます。しかし退職後は、一度労務可能な状態になると、その後ふたたび働けなくなっても継続給付は再開されません。
時系列で見る|いつ何が決まるのか
要件を1つずつ見ると複雑ですが、時系列に並べると分かりやすくなります。前の段階で決まったことが、後の段階に影響するという構造です。
STEP 1と2は、在職中にしか実行できません。とくにSTEP 2の受診は、時間が経ってからさかのぼることができないため、体調に不安があるなら早めの受診が結果的に選択肢を広げます。
失業手当との関係|同時に受け取れない理由
「傷病手当金と失業手当、両方もらえないの?」というご質問をよくいただきます。
同時に受け取ることはできません。制度の前提が正反対だからです。
| 傷病手当金 | 失業手当(基本手当) | |
|---|---|---|
| 前提となる状態 | 働けない(労務不能) | 働ける(就労可能) |
| 財源 | 健康保険 | 雇用保険 |
| 金額の目安 | 月収の約3分の2 | 退職前の給与の約50〜80% (日額に上限あり) |
| 期間 | 通算1年6か月 | 90日〜360日 (年齢・加入期間・退職理由による) |
| 手続きの窓口 | 健康保険の保険者 | ハローワーク |
失業手当は「働ける状態で、求職活動をしている人」に支給される給付です。ハローワークで求職の申込みをするということは、働ける状態であると表明することになります。制度の詳細はハローワークインターネットサービスで確認できます。
したがって、求職の申込みをした時点で労務可能とみなされ、傷病手当金は終了します。そして前述のとおり、退職後は一度労務可能になると継続給付は再開できません。
受給期間の延長|療養が長引く場合
失業手当を受け取れる期間は、原則として離職日の翌日から1年間です。この期間を過ぎると、所定給付日数が残っていても受け取れなくなります。
療養中で働けない場合、この1年のあいだに求職活動ができません。そのままでは、失業手当の権利が消えてしまいます。
最大3年間、延長できます
病気やケガ、妊娠・出産・育児、家族の介護などの理由で30日以上働けない状態が続いた場合、受給期間を最大3年間延長できます。本来の1年と合わせて、最長4年です。
| 手続き | 受給できる期間 |
|---|---|
| 延長しない場合 | 離職日の翌日から 1年 療養が1年を超えると、失業手当は受け取れません |
| 延長した場合 | 離職日の翌日から 最長4年 回復してから、あらためて失業手当を受け取れます |
申請には期限があります
働けない状態が30日を過ぎた日の翌日から申請できます。この手続きを知らずに期限を過ぎてしまう方が少なくありません。
傷病手当金を受け取っているあいだは生活が成り立っているため、失業手当のことを考える余裕がなく、気づいたときには期間が過ぎていた、というケースが起こりやすいところです。
ケース別に見る|あなたはどれに当てはまるか
ここまでの内容を、よくある3つのケースに当てはめて整理します。
ケースA|在職中で、体調を崩している
| 確認すること | 健康保険の被保険者期間が1年以上あるか |
|---|---|
| 次にすること | 医療機関を受診し、医師の判断を受ける |
| 受け取れる可能性 | 傷病手当金(最長1年6か月)+ 失業手当 |
最も選択肢が多い状態です。在職中にしか満たせない要件を、これから満たしにいけます。
ケースB|退職日が決まっている
| 確認すること | 退職日までに受診できるか、被保険者期間が足りるか |
|---|---|
| 次にすること | 退職日から逆算して、必要な手続きの順番を決める |
| 受け取れる可能性 | 間に合えばケースAと同じ。時間との勝負になります |
退職日を過ぎると満たせなくなる要件があるため、この段階での判断が結果を大きく左右します。
ケースC|すでに退職している
| 確認すること | 在職中に傷病手当金を受給していたか |
|---|---|
| 次にすること | 受給していた場合は継続給付の申請。していない場合は失業手当の検討 |
| 受け取れる可能性 | 在職中の受給がなければ、傷病手当金は対象外 |
退職後に新たに傷病手当金を申請することはできません。ただし、失業手当の受給期間延長など、使える制度が残っている場合があります。
月収と退職予定日を入れるだけで、受け取れる見込み額と受給スケジュールが分かります。
入力は30秒、登録も費用もかかりません。
※ 試算です。実際の支給は各窓口の審査により決まります
よくある質問
対象になりません。継続給付は、在職中に支給されていた(または支給の要件を満たしていた)傷病についてのものです。退職後に新たに傷病手当金を申請することはできません。
健康保険の被保険者期間が継続して1年に満たない場合、退職後の継続給付の対象にはなりません。ただし在職中であれば、要件を満たせば通常の傷病手当金は受けられます。
一般的には傷病手当金のほうが高くなる傾向があります。傷病手当金は月収のおよそ3分の2、失業手当は退職前の給与のおよそ50〜80%が目安ですが、失業手当には日額の上限があるためです。
ただし、受け取れる期間や条件が異なるため、金額だけで判断できるものではありません。ご自身の状況に合わせた確認が必要です。
傷病手当金は健康保険からの給付であり、受給の記録が転職先に共有される仕組みはありません。離職票や源泉徴収票にも記載されません。
対象になります。業務外の傷病で、医師が労務不能と判断した場合であれば、精神疾患も身体疾患も同じように対象です。心療内科・精神科での受診が対象になるほか、腰痛やヘルニア、手術後の療養なども含まれます。
傷病手当金の申請書には、事業主が証明する欄があります。在職中の申請では会社を通す必要があります。退職後の期間分については取り扱いが異なる場合がありますので、加入先の保険者にご確認ください。
まとめ
- 退職後も傷病手当金を受け取り続けるには、4つの要件をすべて満たす必要があります
- そのうち「被保険者期間1年以上」と「退職日時点で受給しているか受給できる状態」の2つは、在職中にしか満たせません
- 退職後は、一度労務可能な状態になると継続給付は再開されません
- 失業手当は「働ける状態」が前提のため、傷病手当金との同時受給はできません
- 療養が長引く場合は、失業手当の受給期間を最長4年まで延長できます。申請には期限があります
制度は複雑ですが、順番と期限さえ押さえておけば、受け取れるはずのものを取りこぼさずに済みます。逆に言えば、知らないまま進めてしまうと、あとから取り返すことができません。
ご自身がどの要件を満たしているか分からない場合や、退職日が決まっていてお急ぎの場合は、一度ご相談ください。判断が難しいケースもありますので、確認だけでも承ります。
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)|傷病手当金の要件・申請書類
- 厚生労働省|雇用保険制度の概要・基本手当日額の変更
- ハローワークインターネットサービス|基本手当・受給期間の延長
本記事は制度の一般的な説明です。実際の支給の可否・金額・期間は、加入先の健康保険の保険者およびハローワークの審査により決定されます。当社が受給を保証するものではありません。
当サービスは民間の相談サポートであり、公的機関ではありません。また、症状のない方に受診をおすすめするものではありません。
本記事に記載の金額・給付日数などの数値は、令和7年8月1日時点のものです。制度改正により変更される場合があります。
※本記事は制度の一般的な説明です。個別の可否・金額は、健康保険の保険者およびハローワークの審査により決定されます。記事内容は公開時点の情報にもとづきます。