コラム

うつ病で退職を考えている方へ|使える制度と、決める前に知ること

/最終更新:2026年8月5日
この記事について

うつ病や適応障害などで、仕事を続けることに不安を感じている方に向けて、制度上どのような選択肢があるかを整理しました。

退職をおすすめする記事ではありません。休職という選択肢を含めて、判断の材料としてお読みください。

この記事でわかること
  • 退職する前に検討できる「休職」という選択肢
  • 傷病手当金の要件と、金額の目安
  • 医療費の負担を軽くする制度

体調を崩したとき、「辞めるしかない」と考えてしまうことがあります。実際には、制度上いくつかの選択肢があります。

この記事では、その選択肢を並べます。どれを選ぶかはご自身が決めることですし、いま決めなければならないわけでもありません。

退職の前に|休職という選択肢

多くの会社には、休職の制度があります。在籍したまま療養するという形です。

図解1|休職と退職の違い
休職 退職
傷病手当金 受け取れます 要件を満たせば継続できます
復職 戻る場所があります 再就職活動が必要です
社会保険 継続(保険料の負担はあります) 自分で加入し直します
回復後に再び休む場合 通算1年6か月の枠内で再開できます 再開できません

在職中のほうが、選択肢が多く残ります

退職後は、一度でも労務可能になると再開できません

在職中であれば、いったん復職して再び体調を崩しても、通算1年6か月の枠内で傷病手当金の支給を再開できます。

しかし退職後の継続給付は、一度労務可能な状態になると、その後ふたたび働けなくなっても再開されません。

この違いは大きいため、休職の制度があるかどうかを就業規則で確認しておく価値があります。

ただし、休職期間には限りがあります。期間が満了しても復職できない場合、退職となる規定を設けている会社が多くあります。まず就業規則で、休職期間の長さと満了後の扱いを確認してください。

傷病手当金の要件

傷病手当金は、うつ病や適応障害などの精神疾患も対象です。身体の病気と同じ扱いになります。

図解2|支給の要件
要件 内容
健康保険の被保険者 勤務先の健康保険に加入していること
労務不能 療養のため仕事に就くことができない状態。判断するのは医師です
業務外の傷病 仕事が原因の場合は労災保険の対象になります
待期3日間 連続する3日間を含み、4日以上休んでいること
給与の不支給 休んだ期間に給与の支払いがないこと(一部支給の場合は差額)
労務不能かどうかを決めるのは医師です

申請書には、医師が記入する証明欄があります。ここに記入がなければ申請できません。

ご自身で「働けない」と判断するものでも、事業者が判断するものでもありません。実際に受診し、診察を受けたうえでの医師の判断になります。

医師には、ご自身の状態をそのままお伝えください。よく見せる必要も、悪く見せる必要もありません。

診察していない期間は証明できません

医師が証明できるのは、実際に診察したうえで判断した期間です。診察していない期間について、さかのぼって証明することはできません。

そのため、申請を続けるには通院を継続する必要があります。

受け取れる金額の目安

支給額は、標準報酬月額のおよそ3分の2です。

図解3|月収別の目安
月収(額面) 1日あたり 1か月あたり 18か月の総額
20万円 4,444円 約13万円 約240万円
25万円 5,556円 約17万円 約300万円
30万円 6,667円 約20万円 約360万円
35万円 7,778円 約23万円 約420万円
40万円 8,889円 約27万円 約480万円

※ 標準報酬月額が月収と同額であると仮定した試算です。支給期間は通算1年6か月です。

ご自身の場合の金額は受給シミュレーターで確認できます。

退職する場合に知っておくこと

療養を続けたうえで、それでも退職を選ぶ場合について整理します。

退職後も傷病手当金を受け取るには

1 退職日までに、健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること
2 退職日の時点で、傷病手当金を受けているか、受けられる状態にあること
3 退職日の時点でも、引き続き労務不能の状態であること
4 退職後も、同じ傷病で労務不能の状態が続いていること

要件1と2は、在職中にしか満たせません。詳しくは傷病手当金は退職後も受け取れる?をご覧ください。

失業手当の給付日数が増える場合があります

精神疾患で通院している方は、「就職困難者」として給付日数が最長360日になる場合があります。自己都合の90日と比べると4倍です。

年齢 雇用保険の加入1年未満 1年以上
45歳未満 150日 300日
45〜64歳 150日 360日
障害者手帳がなくても対象になる場合があります

手帳をお持ちでなくても、主治医の意見書などをもとにハローワークが判断します。

ただし自分から申し出なければ、通常の受給資格者として処理されます。手続きの際にお伝えください。

詳しくは就職困難者とは?をご覧ください。

体調不良による退職は、給付制限がなくなる場合があります

体調を理由とする退職は、「特定理由離職者」に該当する場合があります。自己都合退職の給付制限(原則1か月)がなくなります。

詳しくは特定理由離職者とは?をご覧ください。

療養中は、受給期間の延長が必要です

失業手当は「働ける状態」が前提のため、療養中は受け取れません。受給期間の延長を申請しておかないと、1年で権利が消えます。

詳しくは失業手当の受給期間は1年をご覧ください。

医療費と保険料の負担を軽くする制度

通院が続く場合、次の制度が使えることがあります。

図解4|負担を軽くする制度
制度 内容 窓口
自立支援医療
(精神通院医療)
精神疾患で通院する場合、医療費の自己負担が原則1割になります 市区町村
高額療養費 1か月の医療費が上限額を超えた場合、超えた分が払い戻されます 健康保険の保険者
国民健康保険料の軽減 会社都合・特定理由離職者に該当する場合、前年の給与所得を30%とみなして計算されます 市区町村
国民年金保険料の免除・猶予 失業を理由とする特例があります 年金事務所

いずれも申請が必要です。自動では適用されません。

自立支援医療について

精神科・心療内科への通院が継続する場合、医療費の自己負担が3割から1割になります。所得に応じて、月あたりの上限額も設けられています。

通院が長期にわたる場合、負担の差は大きくなります。お住まいの市区町村の担当窓口で申請できます。

障害年金という制度もあります

症状によって日常生活や仕事に支障がある場合、障害年金の対象になることがあります。

初診日に加入していた年金制度によって、障害基礎年金または障害厚生年金の対象になります。要件が複雑なため、年金事務所または社会保険労務士にご相談ください。

受け取れる金額を確認できます

月収と退職予定日を入れるだけ。
登録も費用もかかりません。まず金額を知ってから、判断の材料にしてください。

受給額をかんたん試算する

※ 試算です。実際の支給は各窓口の審査により決まります

よくある質問

うつ病でも傷病手当金の対象になりますか

なります。業務外の傷病で、医師が労務不能と判断した場合であれば、精神疾患も身体疾患も同じ扱いです。適応障害、双極性障害、パニック障害なども含まれます。

会社に病名を知られますか

傷病手当金の申請書には傷病名を記入する欄があり、事業主証明を依頼する際に会社を通すことになります。ただし退職後の期間分については、取り扱いが異なる場合があります。加入先の保険者にご確認ください。

傷病手当金を受け取ると、転職に不利になりますか

受給の記録が転職先に共有される仕組みはありません。離職票や源泉徴収票にも記載されません。

復職できる自信がありません

復職の判断は、医師と相談しながら決めることです。休職期間には限りがありますが、その間に結論を出さなければならないわけでもありません。まず就業規則で休職期間を確認し、主治医とご相談ください。

いま何から始めればよいですか

制度上の観点でいえば、次の3つが確認できると、選択肢が見えやすくなります。

・健康保険の加入期間が1年以上あるか(保険証や給与明細で確認できます)
・会社に休職の制度があるか(就業規則で確認できます)
・雇用保険の加入期間(雇用保険被保険者証で確認できます)

体調によっては、これらを調べること自体が負担になることもあります。無理のない範囲で構いません。

まとめ

この記事の要点
  • 退職の前に、休職という選択肢があります。在職中のほうが制度上の選択肢は多く残ります
  • 傷病手当金はうつ病などの精神疾患も対象です。判断するのは医師です
  • 支給額は月収のおよそ3分の2、通算1年6か月です
  • 退職する場合、就職困難者として失業手当の日数が増える場合があります
  • 自立支援医療により、通院の自己負担が原則1割になります

制度は複数あり、それぞれ別の窓口が担当しています。全体を把握するのは簡単ではありません。

ご自身の状況で何が使えるか分からない場合は、ご相談いただいても構いません。お急ぎでなければ、体調の良いときで結構です。確認だけでも承ります。

参考にした公的機関の情報

本記事は制度の一般的な説明です。実際の支給の可否・金額・期間は、加入先の健康保険の保険者およびハローワークの審査により決定されます。当社が受給を保証するものではありません。

当サービスは民間の相談サポートであり、公的機関ではありません。医療上の助言を行うものではなく、症状のない方に受診をおすすめするものでもありません。治療に関することは、必ず医師にご相談ください。

本記事に記載の内容は、令和7年8月1日時点のものです。制度改正により変更される場合があります。

※本記事は制度の一般的な説明です。個別の可否・金額は、健康保険の保険者およびハローワークの審査により決定されます。記事内容は公開時点の情報にもとづきます。

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