コラム

有給消化と傷病手当金は両立できる?退職前の順番の考え方

/最終更新:2026年8月5日
この記事の結論

有給休暇を消化している期間は給与が支払われるため、傷病手当金は支給されません。同時には受け取れません。

ただし、待期の3日間には有給を充てられます。また、順番を工夫することで、どちらも取りこぼさずに済む場合があります。

この記事でわかること
  • 有給休暇と傷病手当金が同時に受け取れない理由
  • 待期期間に有給を充てるという考え方
  • 退職前に有給を消化する場合の注意点

体調を崩して退職を考えるとき、多くの方が「まず有給を使い切ろう」と考えます。当然の判断ですし、有給休暇は労働者の権利です。

ただ、傷病手当金との関係を知らないまま進めると、受け取れるはずのものを取りこぼすことがあります。この記事では、その関係を整理します。

同時には受け取れません

傷病手当金の支給条件のひとつに、「休んだ期間について給与の支払いがないこと」があります。

有給休暇は、休んでも給与が支払われる制度です。したがって、有給を消化している期間は傷病手当金が支給されません

図解1|給与と傷病手当金の関係
その日の状態 傷病手当金
有給休暇を取得(給与あり) 支給されません
欠勤(給与なし) 支給されます
給与が傷病手当金より少ない 差額が支給されます

金額を比べると

有給休暇は給与の全額、傷病手当金は月収のおよそ3分の2です。1日あたりの金額でいえば、有給休暇のほうが多くなります

月収30万円の方であれば、有給は日額10,000円、傷病手当金は約6,667円です。

ただし有給には日数の限りがあり、傷病手当金は最長1年6か月受け取れます。総額で考えると、判断は変わってきます

待期期間には有給を充てられます

ここが実務上、知っておきたい点です。

傷病手当金を受け取るには、連続する3日間の待期を満たす必要があります。この3日間は支給の対象になりません。

図解2|待期期間の考え方
過ごし方 傷病手当金
1日目 有給休暇 待期(対象外)
2日目 有給休暇 待期(対象外)
3日目 有給休暇 待期(ここで成立)
4日目〜 欠勤 支給の対象

待期の3日間には、有給休暇・土日・祝日も含められます。

待期の3日間はどのみち支給されない期間です。ここに有給を充てれば、給与を受け取りながら待期を満たせます

待期は「連続」であることが必要です

1日休んで出勤し、また休む、という形では待期が成立しません。3日連続して休む必要があります。

土日をはさむ場合、金曜・土曜・日曜で待期が成立することもあります。判断に迷う場合は、加入先の保険者にご確認ください。

順番による違い

有給がまとまって残っている場合、消化のしかたで受け取れる総額が変わることがあります。

月収30万円・有給20日・療養が必要という方を例に考えます。

図解3|有給20日の使い方
先に有給を全部消化する
1〜20日目
有給休暇(給与 約20万円)
21日目〜
欠勤(待期3日を経て支給開始)
傷病手当金の開始が遅れます
有給期間の収入
約 20 万円

待期に有給を充てる
1〜3日目
有給休暇(待期を満たす)
4日目〜
欠勤(傷病手当金 支給開始)
有給が17日分残ります
残った有給
17 日

※ 有給の残りは、退職時に買い取ってもらえるとは限りません。会社の規定によります。

どちらが有利かはケースによります

一概にどちらが良いとは言えません。次の点を踏まえて判断することになります。

考慮すること 内容
1日あたりの金額 有給のほうが多い(給与の全額 vs 約3分の2)
期間 傷病手当金は最長1年6か月。有給は日数の限りがあります
退職日の状態 継続給付には、退職日時点で労務不能であることが必要です
有給の買い取り 会社の規定によります。買い取り義務はありません

退職日と有給消化の関係

ここが、この記事でもっとも注意していただきたい点です。

退職後も傷病手当金を受け取り続けるには(継続給付)、退職日の時点でも引き続き労務不能の状態であることが必要です。

退職日に労務した場合の取り扱い

退職日に労務した場合は、労務可能な状態になったものとして扱われます。この場合、退職後の継続給付は受けられません。

有給休暇を消化して退職日を迎える場合も、労務不能の状態が続いていることが要件になります。

判断に迷う場合は、事前に加入先の健康保険の保険者や専門家にご確認ください。

要件の全体像

退職後の継続給付には、次の4つがすべて必要です。

1 退職日までに、健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること
2 退職日の時点で、傷病手当金を受けているか受けられる状態にあること
3 退職日の時点でも、引き続き労務不能の状態であること
4 退職後も、同じ傷病で労務不能の状態が続いていること

詳しくは傷病手当金は退職後も受け取れる?で解説しています。

図解4|有給消化から退職までの流れ(一例)
STEP 1
医療機関を受診する
労務不能かどうかを判断するのは医師です。受診していなければ申請できません。

STEP 2
連続3日間の待期を満たす
有給休暇を充てることができます。

STEP 3
4日目以降、傷病手当金の申請を始める
給与が支払われていない期間が対象になります。

STEP 4|退職日
労務不能の状態が続いているか
この日の状態が、退職後も受け取れるかどうかの分かれ目になります。

退職日から逆算した進め方を確認できます

月収と退職予定日を入れるだけで、受け取れる見込み額と、
いつ・何をすればよいかのスケジュールが表示されます。

受給額をかんたん試算する

※ 試算です。実際の支給は各窓口の審査により決まります

よくある質問

有給休暇を会社が認めてくれません

有給休暇は労働者の権利で、原則として取得を拒むことはできません。ただし会社には時季変更権があり、事業の正常な運営を妨げる場合に限り、時季を変更することができます。退職日までに消化できないなど、対応に困る場合は労働基準監督署にご相談ください。

有給を買い取ってもらえますか

会社に買い取りの義務はありません。ただし退職時に限り、就業規則等で買い取りを定めている会社もあります。まずは規定をご確認ください。

傷病手当金を受けている間も有給は増えますか

年次有給休暇の付与要件には出勤率がありますが、業務外の傷病による欠勤の扱いは会社の規定によります。就業規則をご確認ください。

給与が一部だけ支払われている場合はどうなりますか

支払われた給与が傷病手当金の額より少ない場合は、その差額が支給されます。給与のほうが多い場合は支給されません。

退職日を有給消化の最終日にしても大丈夫ですか

退職日の時点で労務不能の状態が続いていることが、継続給付の要件です。有給消化中であっても、その状態が続いているかどうかが判断の基準になります。取り扱いは保険者によって異なる場合がありますので、事前にご確認ください。

まとめ

この記事の要点
  • 有給休暇の期間は給与が支払われるため、傷病手当金は支給されません
  • ただし待期の3日間には有給を充てられます
  • 1日あたりの金額は有給のほうが多く、期間は傷病手当金のほうが長いという関係です
  • 退職後の継続給付には、退職日の時点でも労務不能であることが必要です
  • 有給の買い取りに、会社の義務はありません

有給休暇の消化と傷病手当金は、どちらも権利として使えるものです。ただ、順番によって結果が変わります

ご自身の有給日数や退職予定日に応じてどう進めるべきか分からない場合は、一度ご相談ください。確認だけでも承ります。

参考にした公的機関の情報

本記事は制度の一般的な説明です。実際の支給の可否・金額・期間は、加入先の健康保険の保険者の審査により決定されます。当社が受給を保証するものではありません。

当サービスは民間の相談サポートであり、公的機関ではありません。症状のない方に受診をおすすめするものではありません。

本記事に記載の内容は、令和7年8月1日時点のものです。制度改正により変更される場合があります。

※本記事は制度の一般的な説明です。個別の可否・金額は、健康保険の保険者およびハローワークの審査により決定されます。記事内容は公開時点の情報にもとづきます。

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